道のないグレーシャーベイ(Glacier Bay)国立公園の大自然では、本格的にハイキングする人は、シトカオルダーの茂みに絡まれることは間違いありません。シトカオルダーの根には藍色細菌(シアノバクテリア)が小さいこぶを作りその中に生息しています。藍色細菌は空気中の窒素を抜き取り、植物が使える状態に「直す」ため、氷河によって表土が削り取られた場所にある植物にとって実に有り難いことです。氷河後退から25年も経たないうちに絡み合った茂みの群生が現れ、現在ではグレーシャーベイ上流の大部分を覆っています。そのうちシトカオルダーによって肥沃になった土壌に、シトカトウヒが根を下ろして落葉性の低木に影を落とし(そのため落葉性植物は育たなくなり)、アメリカハリブキなどが生えます。ハイカーを悩ませたシトカオルダーに代わり、今度はアメリカハリブキなどがハイカーの悩みとなります。 (シトカオルダーの学名:Alnus viridis、俗名:Sitka alder。シトカトウヒの学名:Picea sitchensis、俗名:Sitka spruce。ベイトウヒ[米唐檜]とも呼ばれる。アメリカハリブキの学名:Oplopanax horridus、俗名:Devil’s club) 写真: Nathan Borson