現在のグレーシャーベイ(Glacier Bay)から約30キロ西にあるテイラー湾(Taylor Bay)とブレイディ氷原(Brady Icefield)。氷河の発達、アウトウォッシュ・プレーン(氷河が融けて流れ出した水流によって氷河の前面に作られる堆積平野のこと)が見られ、いわゆる「湾」の状態が見られないため、約一千年前のグレーシャーベイに似ていると言われます。この写真から当時の様子を再現すると、国立公園管理官のクルーズ船上での交代はアウトウォッシュ・プレーンの中央部で行われ、バートレット・コーブ(Bartlett Cove)公園施設は右手に見える緑の陸地部分に位置していたことになります。
この写真に見られるブレイディ氷原の表面は傾斜がなだらかですが、グレーシャーベイと同様、氷の下の部分は海面よりずっと低く、形もでこぼこしています。山の側面が氷の下にあるようなものです。もし、写真に見られる氷を全て持ち上げることが出来るとすれば、その下にはU字型の深い谷が残るでしょう。
将来、氷のない状態は二つ予想されます。一つは、現在のグレーシャーベイのように、U字型の谷の部分が海水に覆われる状態です。もう一つは、テイラー湾の扇形のアウトウォッシュに堰き止められた大きな氷河湖の状態です。おそらく後者の可能性が高いと思われますが、氷の下の領域全体を表す地図ができるまでは、想像して楽しむことも出来ます。
(アウトウォッシュ・プレーンとは、氷河が融けて流れ出した水流によって氷河の前面に作られる堆積平野のこと。) 写真: Denny Capps